浅井 忠 (1856‐1907)

高校時代、浅井忠先生の「グレーの古橋」に代表される一連のグレーシリーズの油絵と水彩に感動しました。浅井先生は当時パリ万博の鑑査官として1901年頃渡欧されています。年齢的にも最も円熟した時にフランスに行かれたことになります。

美術学校時代、デッサンを習った井上先生と尊敬する画家について話した事があります。素晴らしいデッサンを残している安井曾太郎先生あたりかなとお尋ねしたところ、自分には実はほかに尊敬する画家がいると言われました。もしかして、浅井忠先生のことかなと当時考えたりしていました。後年、先生が私の個展に来られた時、そのことを聞くとやはり浅井先生でした。

グレーの秋 1901年 東京国立博物館蔵
グレーの洗濯場 1901年 油彩

上は至文堂より昭和46年に発行されたものですが、浅井先生の画集ではこれが一番すぐれていると思います。他の出版社からの画集も結構あるのですが、この画集が一番のお気に入りです。一つには編者の乾由明氏が浅井先生にぞっこん(?!)で、説明文からそれがはっきりと伝わって来ます。また、私の勝手な憶測ですが、現代と違い昭和40年代は印刷技術も軌道に乗り始めた頃で、原画に近い色合いを出すために出版に関わる人々が腐心されたためではないかと思います。後年出版されたヴァンタンの画集には興醒めしたのを覚えています。

「グレーの古橋」、「グレーの柳」、「グレーの洗濯場」など浅井ファンにはたまらない本です。なお、グレーはパリから約70kmに位置し、フォンテーヌブローの南端、セーヌ河の支流ロワン川沿いにある牧歌的な村です。当時から画家や文人たちが集まるところでした。

左下は京都新聞社が発行した大判で厚冊の画集 上真中は昭和30年代に出された講談社版
展覧会時購入したポストカード 1889年 浅井先生33歳の作

知人の方より、「グレー村の画家たち」と題する画集をいただきました。黒田清輝、久米桂一郎、浅井忠らの作品が多数掲載されています。

読売新聞社 2000年発行 303ページ