水彩画は英国の伝統抜きには考えられない部分があると思います。道具にしても。100年前に出版された水彩画本を通してその伝統の片鱗に触れてみましょう。

上左は「A HISTORY OF BRITISH WATER-COLOUR PAINTING 」とてもしっかりとした本です。英国の有名な作家たち、ジョン・ロバート・カズンズ、ガーティン、ターナー、ダヴィット・コックス、コンスタブル、コットマンらの名が連なります。カラー図版もところどころあり、ハトロン紙が図版を保護しています。見開きに「1908 クリスマス」と記名がありますので、プレゼントとして贈られたものでしょう。

上真ん中は「GARDEN COLOUR」英国の四季の移ろいをそれぞれの季節の花を中心に描かれた美しい本です。花だけの水彩画集といったところでしょうか。左下「JOHN SELL COTMAN」は私の尊敬するコットマンの画集です。ありがたいことにプレート(水彩画のカラーページ)が一枚も抜けずに残っていました。カラーページは台紙に張り付けされており、コットマンの作品について広く知ることができました。

下右のやや暗い緑のハードカバーの画集は、これまた尊敬するトマス・ガーティンの画集です。図書館の除籍本らしくカラー図版の抜けは少しありましたが、彼のたぐいまれなる描写力に感動します。一点透視で有名な水彩画「聖デニス通り」が残っていたのは幸いでした。現在の英国の画集でさえこのような本はないのではないでしょうか。かの有名なターナーはジョン(ガーティンのこと)が生きながらえていたら、自分は(仕事がなくて)餓死していただろうと言っていたそうです。(ガーティンは夭折)